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思い出の残し方。

[読了時間の目安:約 6 分]

「思い出」の保存について、興味深い記事がありました。

»本当に残したい思い出は「アナログ」に保存する | Lifehacking.jp

この記事のキモは、「思い出をちゃんと残すために、あえてアナログな方法を選ぶ」というところだと思います。
単なるノスタルジーやアンチテーゼではなく、よりベターな選択肢として「アナログ」を選ぶ、と。

デジタルデータというのは本当に便利なもので、それ自体は決して劣化することはありません。
コピーしようが、どれだけ放置しようが、0 と 1 の信号でしかない「データ」は、永久に変化することなくそのままで在り続けるものです。

しかし、問題なのはそのデータを載せている媒体。いわゆる「メディア」ですね。
データが変わらなくても、媒体が劣化したり破損したりすれば意味がありません。
CD などは光(紫外線)に弱く、品質の良くないものであれば、蛍光灯に一日当てておくだけで使い物にもならない(こともある)そうです。
また、「HDD は消耗品」というのも、デザイン業界などではごく当たり前の合言葉ですし、持ち運ぶことが前提の MO も、落とした衝撃で認識されなくなったりします。

それに、次々と新たな技術が登場するのも「デジタル」の常。
一世を風靡した感のある MD ですが、現在お目にかかることはほぼありません。
フロッピーディスクも、PC 本体に搭載されなくなって何年経ったでしょうか。
増して 5 インチのディスクなど、僕のように使ったこともない、あるいはそんなものがあったことすら知らない人の方が多いのが実情でしょう。

数年前に勤めていた会社では、マイクロフィルムというものを使っていました。
10 年も 20 年も前の図面や書類を探すために、一日中専用の読み取り機に向かい合っていた日を思い出します。

現在の Web を象徴するトレンドの一つとして、「クラウドコンピューティング(cloud computing)」というものがあります。
どこでデータを保存したり処理したりしているか分からない、というその考え方は、ある意味「アナログ」と対極に位置しているものかも知れません。

何かの媒体に依存している訳ではないですし、バックアップやセキュリティの対策もちゃんとしてくれてたりもします。
ですから、「データを確実に保存・保管する」という観点からすれば、自分で管理するよりも確実で安全な方法のような気がするのも本当のところ。

しかし、やはりそれもインターネットという媒体を介することが大前提。
ネットに繋がらなければ何も出来ないというのは、ケータイに依存するのにも似て心許ないものです。
それに、データを保存しているサーバーが故障したり、処理中にエラーが発生してデータが駄目になってしまったりするリスクも相変わらず存在します。

で、ローカルマシンに「バックアップ」するという対策を取ったりするわけです。
こうなってくると、どっちがオリジナルか分からないですね。本末転倒。

結局、色んな情報を保存する一番確実な方法は、「手元に置いておく」ということになるのかも知れません。
そして、それを残しておく方法あるいはカタチとして、「アナログ」は案外優秀なのではないでしょうか。

コピーしても劣化しない、簡単に書き替えられる、どんなに遠くても短時間で届けることができる、などがデジタルのメリットであるならば、あえてアナログを選択するときのメリットは恐らくその真逆。
つまり、「コピーできず、書き替えられることもなく、どこかへ行ってしまうこともない」という絶対の信用がアナログにはあるのです。
もちろん、写真が色褪せたりテープが伸びたりといった劣化は避けられませんが、それでも一瞬で消えてなくなることはありません(どこかにしまいこんで見付からないことはありますが)。

↑の記事中にもあったような、白黒写真とカラー写真の違いなどはよく分かりません。
でも、これまで「完全」を求めるあまりにデジタル一辺倒となり、情報の「皮膚感」が失われている気はします。
ちょうど、レコードから CD になって失われた「味」のようなもの、あるいは手紙から E メールになって消えてしまった「思索」のようなものが。
そう、「皮膚感」がなければ「思い出」とは呼べないのです。

あるミュージシャンは、歌詞を考えるときは必ず手書きなんだそうです。
考え始めた頃に書いたものも決して捨てずに、単なるメモからボツ案まですべての痕跡を残しながら。
それは、文字の大きさや筆圧、あるいは「勢い」などを見るだけで、その言葉を書いたときの心理状態が分かるため。
何となく書いてみただけなのか、心からの叫びや願いとして綴られたものなのか。
こうした「気持ち」や「思い」を読み取るために、最新の機材が並ぶスタジオでも紙の上にペンを走らせるのです。

地デジをやめてアナログ放送を継続しろ! なんて問題じゃありません。
要は使い方。
どちらにもメリットとデメリットがあるのですから、それを見極めて使い分ければ良いわけです。
ブログに載せる写真ならケータイで充分ですが、風景やファッションでは銀塩の大判カメラが必要となるように。

ただ、最近はどうも「デジタル=正しい、すごい」みたいな図式がやたらと目に付くのが困りもの。
逆に、何から何までアナログ回帰しすぎても、せっかく積み上げてきた利便性が損なわれるだけです。
もうそろそろフラットな目線を取り戻し、冷静なバランス感覚で見直す時期に来ているのかも知れませんね。

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